本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ナンシー・ウッド 「今日は死ぬのにもってこいの日」

この手で翼の折れた鳥を
わたしは運んだものだ。
この手で、太陽の下
わたしはわたしの子どもたちに触れたものだ。
この手で、わたしは生きた土の家を建てた。
この手で、育ちゆくトウモロコシ畑を耕してきた。
この手で、生きる術を学んだのと同じくらい、殺す術も学んだ。
この手は、わたしの精神の道具だ。
この手は、わたしの怒りの戦士だ。
この手は、わたしの自我の限界だ。
この手は年老い
わたしが昔知っていた世界に触れるべく伸ばされたが
触れることができたのは、見知らぬ壁ばかりだった。

 

たぶん、君自身になるってことは
泣き叫ぶ嵐の中に、君独りいるってことだ、
そのとき君が求めるすべては
人の焚き火に手をかざすことだけ。

 

金関寿男 訳