本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ナンシー・ウッド 「今日は死ぬのにもってこいの日」

  私たちには、自分を偽ることなんてとてもできやしない。お金と所有が人を幸せにするなんてことを、信じるふりをして世を渡ることなど、どうしてできるだろう?口を開けば白人は、わたしたちにはもっと物が必要だと言う。しかし物を持てば、わたしたちはその代償として、自分の魂を売らねばならない。彼らはそうは言わない。けれどわたしたちは、それが本当だと知っている。なぜならそれは、今までたくさんの部族に起こったことだからだ。彼らは今、どこにいるんだろう?もう一度、インディアンに戻ろうとしているだろうか?けれど、それはできない相談だ。だって彼らには土地がない。ルーツがない。だからわたしたちは、死にもの狂いで戦うのだ。 

 

たとえそれが、一握りの土くれであっても
良いものは、しっかりつかんで離してはいけない。
たとえそれが、野原の一本の木であっても
信じるものは、しっかりつかんで離してはいけない。
たとえそれが、地平の果てにあっても
君がなすべきことは、しっかりつかんで離してはいけない。
たとえ手放すほうがやさしいときでも
人生は、しっかりつかんで離してはいけない。
たとえわたしが、君から去っていったあとでも
わたしの手をしっかりつかんで離してはいけない。

 

金関寿男 訳