本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

リルケ 「リルケ全集第4巻」

夜の散歩


何ものも比較することはできない。なぜならそれ自身とだけで
全体でないものとは何だろう、そして発言され得るものとは。
私たちは何ものをも名づけないで ただ耐えていれば
了解し合うことができる。そこでは輝きが
そしてあそこで眼差しが、おそらく私たちにふれたのだ、
あたかもそのなかに 私たちの生命あるものが
生きていたかのように。反抗する者には
世界は与えられない。多くを理解しすぎる者には
永遠は通りすぎてゆく。ときには
このような大いなる夜々のなかで 私たちは
危険の外にいるかのようだ、同じかろやかな部分になり
星々に配分されて。なんと星々が迫ってくることか。


小松原千里 内藤道雄 塚越敏 小林栄三郎 訳