本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

ヘンリー・デイヴィッド・ソロー 「森の生活—ウォールデン—」より高い法則

もし昼と夜とが歓びをもって迎えられるようなものであり、生活が花や匂いのよい草のように香りをはなち、より弾みがあり、より星のごとく、より不朽なものであったら——それが君の成功なのだ。すべての自然は君に対する祝賀であり、君は自らを祝福すべき理由を刻々にもつ。最大の利得と価値とはそれと認められることから最も遠い。ともすればわれわれはそういうものが存在するかどうかをうたがう。われわれはたちまちそれらを忘れてしまう。それらは最高の現実である。たぶん、最もおどろくべく最も現実的な事実は決して人から人へとつたえられない。わたしの毎日の生活の真の収穫は朝と夕べの色どりにいくらか似たもので、手で触れがたく名状しがたい。それはとらえられた小さな星くずであり、わたしがつかまえた虹のひとかけである。

 

神吉三郎 訳