本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

J.R.ヒメネス 「プラテーロとわたし」日食

  ついさっきまで、複雑な金の光を放って、あらゆるものを二倍にも三倍にも、いや百倍にも、大きく美しく見せていた太陽が、たそがれのゆるやかな変化もなしにかくれてしまうと、すべては金から銀へ、銀から銅へ、きゅうにとり変えられたように、ひっそりとしずんでしまった。町は、なんの値うちもない、さびだらけの銅貨のようになってしまった。通りも、広場も、塔も、丘の小径も、なんともの悲しげで、何と小さくなったことだろう!
ずっと下の裏庭にいるプラテーロも、紙を切り抜いた作りもののような、まったく別のロバに見えた……

 

伊藤武好 伊藤百合子 訳