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本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

V.E.フランクル 「夜と霧」死の蔭の谷にて

この瞬間、眺めているわれわれは嫌悪、戦慄、同情、昂奮、これらすべてをもはや感じることができないのである。苦悩する者、病む者、死につつある者、死者——これらすべては数週の収容所生活の後には当り前の眺めになってしまって、もはや人の心を動かすことができなくなるのである。

 

無感覚、感情の鈍麻、内的な冷淡と無関心……収容所囚人の心理的反応の第二の段階のこれらの特徴は、彼をまた間もなく毎日の、また毎時間の殴打に対しても無感覚にさせた。この無感動こそ、当時囚人の心をつつむ最も必要な装甲であった。

 

霜山徳爾 訳