本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

2019-03-15から1日間の記事一覧

スタンダール「赤と黒」

世論の支配は、たしかに自由を保証してくれる。が、その不都合な点は、それが不必要なことにまで、たとえば私生活にまで干渉してくることである。 大岡昇平・古屋健三 訳

スタンダール「赤と黒」

《おれは真実を愛した……それはどこにあるのだ?……どこを見ても偽善ばかり、少なくともぺてんばかりだ。どんな碩徳の士も、どんな偉人も、例外ではない》ジュリアンの唇は嫌悪の情にひきつった……《そうだ、人間は人間を信頼することができない。 大岡昇平・古…

スタンダール「赤と黒」

自然法などありはしない。そんな言葉は、このあいだおれを痛めつけた次席検事ぐらいが口にしそうな時代がかった世迷い言だ。あいつの祖先は、ルイ十四世時代の没収財産のおかげで金持ちになったんではないか。法というものは、かくかくのことをしてはならぬ…

スタンダール「赤と黒」

「そっとしておいてくれ、僕は現在申し分のない生活を送っているのだ。君らの瑣末な骨折り話や、みみっちい現実生活の話は、いずれにしろ僕にはうるさいばかりだし、天上から僕を引きずりおろすようなものだ。人間にはそれぞれちがった死にかたがある。僕は…