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本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トマ・ピケティ 「21世紀の資本」おわりに

本研究の総合的な結論は、民間財産に基づく市場経済は、放置するなら、強力な収斂の力を持っているということだ。これは特に知識と技能の拡散と関連したものだ。でも一方で、格差拡大の強力な力もそこにはある。これは民主主義社会や、それが根ざす社会正義…

Luis Sepúlveda "Historia de una gaviota y del gato que le enseñó a volar"

—Todos te queremos, Afortunada. Y te queremos porque eres una gaviota, una hermosa gaviota. No te hemos contradicho al escucharte graznar que eres un gato porque nos halaga que quieras ser como nosotros, pero eres diferente y nos gusta que…

J.R.ヒメネス 「プラテーロとわたし」日食

ついさっきまで、複雑な金の光を放って、あらゆるものを二倍にも三倍にも、いや百倍にも、大きく美しく見せていた太陽が、たそがれのゆるやかな変化もなしにかくれてしまうと、すべては金から銀へ、銀から銅へ、きゅうにとり変えられたように、ひっそりとし…

J.R.ヒメネス 「プラテーロとわたし」夕景

丘の頂き。そこに落日がある。落日はむらさきいろに染まり、みずからの光の矢で傷つき、からだじゅうから血を流しているようだ。みどりの松林は入り日を受けて、ほんのりと赤く彩られている。まっかな、すきとおった小さな花や草が、しめりけのある明るいか…

J.R.ヒメネス 「プラテーロとわたし」小川

おまえはどうか知らないが、幼い頃の空想というものは、なんとすばらしい魅力だろうね、プラテーロ!それはみな、たのしい変化を見せながら、遠ざかり、また近づいてくる。心に浮かぶ幻想の絵のように、すべてが見えたかと思うと、また見えなくなる…… そして…

J.R.ヒメネス 「プラテーロとわたし」清らかな夜

私の心にひそむ力は、なんと私を高めてくれるのだろう!私はまるで、自由の鐘をかざした素朴な石の塔になったようだ。ごらん!空いっぱいの星を!あんまりたくさんあるので、目がくらんでしまう。大空は、子どもたちの世界のようだ。それは理想の愛に光りかがや…

エンデ全集15 「オリーブの森で語りあう」(対談集)

十六世紀はじめには、世界を客観と主観に二分するのは、なにか特定の研究をすすめるための、まったくのフィクションだということが、まだみんなの意識にのこっていた。ところが、時代がすすむにつれて、この二元論はフィクションにもとづいているという点が…

V.E.フランクル 「夜と霧」死の蔭の谷にて

この瞬間、眺めているわれわれは嫌悪、戦慄、同情、昂奮、これらすべてをもはや感じることができないのである。苦悩する者、病む者、死につつある者、死者——これらすべては数週の収容所生活の後には当り前の眺めになってしまって、もはや人の心を動かすこと…

V.E.フランクル 「夜と霧」非情の世界に抗して

人間が強制収容所において、外的にのみならず、その内面生活においても陥って行くあらゆる原始性にも拘わらず、たとえ稀ではあれ著しい内面化への傾向があったということが述べられねばならない。元来精神的に高い生活をしていた感じ易い人間は、ある場合に…

V.E.フランクル 「夜と霧」苦悩の冠

経験的には収容所生活はわれわれに、人間は極めてよく「他のようにもでき得る」ということを示した。人が感情の鈍麻を克服し刺戟性を抑圧し得ること、また精神的自由、すなわち環境への自我の自由な態度は、この一見絶対的な強制状態の下においても、外的に…

カミュ 「異邦人」第2部

そのとき、なぜか知らないが、私の内部で何かが裂けた。私は大口をあけてどなり出し、彼をののしり、祈りなどするなといい、消えてなくならなければ焼き殺すぞ、といった。私は法衣の襟くびをつかんだ。喜びと怒りのいり混じったおののきとともに、彼に向か…

J.D.サリンジャー 「ライ麦畑でつかまえて」

続いて僕は、みんながよってたかって僕を墓地の中に押しこめて、墓石に名前を彫ったりなんかすることを考えた。まわりはみんな死んだ奴らだからな。いやあ、人間、死ぬと、みんなが本当にきちんと世話をしてくれるよ。僕が死んだときには、川かなんかにすて…

J.D.サリンジャー 「ライ麦畑でつかまえて」

多くの人たちが、ことに、この病院にいる精神分析の先生なんかがそうだけど、今度の九月から学校に戻ることになったら、一生懸命勉強するかって、始終僕にきくんだな。そんなの、実に愚問だと思うんだ。だって、実際にやるまでは、どんなようなことになるか…

ウンベルト・サバ 「ウンベルト・サバ詩集」

ミラノ 石と霧のあいだで、ぼくは休日を愉しむ。大聖堂の広場に憩う。星のかわりに夜ごと、ことばに灯がともる。 人生ほど、生きる疲れを癒してくれるものは、ない。 須賀敦子 訳

サン=テグジュペリ 「人間の土地」僚友

何ものも、死んだ僚友のかけがえには絶対になりえない、旧友をつくることは不可能だ。何ものも、あの多くの共通の思い出、ともに生きてきたあのおびただしい困難な時間、あのたびたびの仲違いや仲直りや、心のときめきの宝物の貴さにはおよばない。この種の…

サン=テグジュペリ 「人間の土地」飛行機と地球

家のありがたさは、それがぼくらを宿し、ぼくらを暖めてくれるためでもなければ、またその壁がぼくらの所有だからでもなく、いつか知らないあいだに、ぼくらの心の中に、おびただしいやさしい気持ちを蓄積しておいてくれるがためだ。人の心の底に、泉の水の…

サン=テグジュペリ 「人間の土地」砂漠のまん中で

さようなら、ぼくが愛した者たちよ、人間の肉体が、三日飲まずには生きがたいとしても、それはぼくの罪ではない。ぼくもじつは知らなかった、自分がかほどまで、泉の囚われだとは。ぼくは、疑わなかった、自分に、こんなにわずかな自治しか許されていないと…

サン=テグジュペリ 「人間の土地」砂漠のまん中で

水よ、そなたには、味も、色も、風味もない、そなたを定義することはできない、人はただ、そなたを知らずに、そなたを味わう。そなたは生命に必要なのではない、そなたが生命なのだ。そなたは、感覚によって説明しがたい喜びでぼくらを満たしてくれる。そな…

サン=テグジュペリ 「人間の土地」人間

つまり、ぼくらは解放されたいのだ。つるはしをひと打ち打ちこむ者は、自分のそのつるはしのひと打ちに、一つの意味があることを知りたく願う。しかも徒刑囚を侮辱する徒刑囚のつるはしのひと打ちは、探検者を偉大ならしむる探検者のつるはしひと打ちとは、…

アン・モロウ・リンドバーグ 「海からの贈りもの」にし貝

しかしわたしは何よりもまず……ほかの望みもまた、そこを目指しているという意味において……わたし自身とひとつでありたい。それがわたしの望みだ。自分への責任や自分の仕事に、最善を尽くすために。 ものごとの核心を正しくとらえ、通俗的なことに足をすくわ…

アン・モロウ・リンドバーグ 「海からの贈りもの」つめた貝

現在という瞬間を生きていくこと……。それは、島での暮らしを、とても新鮮で純粋なものしてくれる。「ここ」と「いま」しかないところで、人は、子どもや聖者のように生きる。毎日が、また自分のすることのひとつひとつが、時間と空間に洗われた島となり、ひ…

アン・モロウ・リンドバーグ 「海からの贈りもの」あおい貝

昼間の仕事や、細々としたこと、親密な感情や、心を開いて話した後でさえ感じる、ある種の窮屈な感覚……。その感覚の後には、新鮮な潮流のように胸に流れ込んでくる満点の星の夜の、そんな限りない大きさと全体性が欲しくなるものだ。 落合恵子 訳

アン・モロウ・リンドバーグ 「海からの贈りもの」ほんの少しの貝

一本の木は空を背景にして、はじめて意味を持つ。音楽もまた同じだ。ひとつの音は前後の静寂によって生かされる。蝋燭の光りは、夜の闇に包まれて炎の花を咲かせる。ささやかなものでも、周りに空間があれば、意味を持つようになる。余白の多い東洋画の片隅…

ヘミングウェイ 「武器よさらば」第3部

ぼくらは雨の中に立ちつづけ、一人ずつ引き出されては尋問され、銃殺された。これまでのところ、尋問された者は残らず銃殺された。尋問者たちはいずれも、自らは死の危険に瀕することなく、死を宣告する者に特有の、あの見事なまでの冷厳さと、峻厳な裁きに…

ヘミングウェイ 「武器よさらば」第5部

人間とはそういうものなのだ。人間は死ぬ。死ぬとはどういうことかも、わからないうちに。知る時間も与えられないうちに。人間は偶然この世に放り出され、ルールを告げられ、最初にベースを踏み外したところを見つかったとたんに、殺されてしまう。もしくは…

ドストエフスキー 「罪と罰」第6部

「罪?どんな罪だ?」と彼は不意に、発作的な狂憤にかられて叫んだ。「ぼくがあのけがらわしい、害毒を流すしらみを殺したことか。殺したら四十の罪を赦されるような、貧乏人の生血を吸っていた、誰の役にも立たぬあの金貸しの婆ぁを殺したことか。これを罪と…

イサム・ノグチ 「ある彫刻家の世界」

I have since thought of ... my close embrace of the earth as a seeking after identity with some primal matter beyond personalities and possessions ... I wanted something irreducible, an absence of the gimmicky and clever. それ以来私は(孤独…

イサム・ノグチ (アナ・マリア・トーレス「イサム・ノグチ 空間の研究」より)

芸術を成り立たせるもののひとつが、芸術の持つ意味であるとするならば、その秩序もまたしかりである。芸術の実践によって秩序が調和へと導いてくれることがどれほど必要なことか。それがないとただの野蛮になってしまう。私は彫刻はとりわけ秩序の芸術であ…

ジャン・ジオノ 「木を植えた男」

あまねく人びとのことを思いやるすぐれた人格者の精神は、長い年月をかけてその行いを見さだめてはじめて、偉大さのほどが明かされるもの。名誉も報酬ももとめない広く大きな心に支えられたその行いは、見るもたしかなしるしを地上に刻んではじめて、けだか…

ジャン・ジオノ 「木を植えた男」

どんな成功のかげにも、逆境にうちかつ苦労があり、どんな激しい情熱を傾けようと、勝利が確実になるまでには、ときに絶望とたたかわなくてはならぬことを知るべきだった。 ある年、ブフィエは一万本ものカエデを植えた。ところが苗は全滅し、かれは絶望のふ…

シモーヌ・ヴェイユ 「根を持つこと」

今日、小学校に通っている農民の子どもは、ピュタゴラス以上にそれについて知っていると一般には信じられている。子どもが従順に、地球は太陽のまわりを廻っていると受け売りするからである。ところが実際には、子どもはもはや星を見てはいないのである。教…

シモーヌ・ヴェイユ 「根をもつこと」

義務の観念は権利の観念に優先する。権利の観念は義務の観念に従属し、それに依存する。一つの権利はそれ自体として有効なのではなく、その権利と対応する義務によってのみ有効となる。一つの権利が現実に行使されるにいたるのは、その権利を所有する人間に…

ニーチェ 「善悪の彼岸」箴言と間奏

高い感覚の強さではなくて、持続が、高い人間を作る。 よい評判をうるためにすでに一度、自分自身を犠牲にしなかった者があるだろうか。 狂気は個人の場合には滅多にないことである、しかし集団、党派、民族、時代の場合には定例である。 人は結局自らの欲求…

「旧約聖書」コヘレトの言葉 第3章

何事にも時があり 天の下の出来事にはすべて定められた時がある。 生まれる時、死ぬ時 植える時、植えたものを抜く時 殺す時、癒す時 破壊する時、建てる時 泣く時、笑う時 嘆く時、踊る時 石を放つ時、石を集める時 抱擁の時、抱擁を遠ざける時 求める時、…

本の記録

読んだ本から、一節を抜き書きしていきます。 著者の思想が結晶化している言葉を掘り当てたいなあと思いながら、日々本を読み続けます。化石を掘り出すみたいに。