本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トルストイ「生きる武器を持て」

  あらゆる学問に精通しているのに、自分自身を知らない人間は、哀れで無知な人間であり、知識はなくても、自分の内面を理解している人間は、立派で見識のある人間である。 ——智恵の暦

 

宮原育子 訳  

トルストイ「生きる武器を持て」

  知識のとぼしい者はよくしゃべり、知識が豊富な者はたいてい黙っている。少ししか知らない者は、自分の知っていることはすごく重要だと思って、みんなに話したがる。多くを知る者は、自分の知らないことがまだたくさんあることをわきまえている。そのため、本当に必要なときにだけ口を開き、人にたずねられなければ黙っているのだ。 ——智恵の暦

 

宮原育子 訳  

トルストイ「生きる武器を持て」

  芸術についてあれこれ考えたり、議論したりすることは、単なる暇つぶしにすぎない。本当に芸術を理解している人は、作品そのものが語りかけることを知っている。だから、言葉で語ることの無意味さも理解しているのだ。芸術を論じる人のほとんどは、芸術をわかっていないし、味わってもいない人々である。——智恵の暦

 

宮原育子 訳  

トルストイ「生きる武器を持て」

  世間一般の習慣に背いて、人々をいら立たせるのはよくないが、さらに悪いのは、大勢の人間がやっているからといって、自分の良心や知性の声を無視することだ。 ——智恵の暦

 

宮原育子 訳    

トルストイ「生きる武器を持て」

不当な評価を受けたら、必死にあらがうのではなく、小さなユーモアで笑い飛ばす。

 

  ある賢い人間が、あなたは悪い人だと思われていますよ、と告げられた。

  その人はこう答えたという。

「それはよかった。みなさん私のことを何もかも知っているわけじゃないんですね。知っていたらもっとひどいことを言われたでしょうから」

 

宮原育子 訳   

トルストイ「生きる武器を持て」

  自分を強く印象づけるには、自慢話をするか、自分を卑下してみせるかのどちらかだ。

  自慢をしても、相手は信用しないだろう。卑下したなら、こちらが意図した以上に低く見られる。だから一番いいのは、自分のことは何も言わないことだ。そして他人がどう思うかよりも、自分自身の良心の意見を大切にすることだ。  ——人生の道

 

宮原育子 訳  

トルストイ「生きる武器を持て」

  時は私たちの後ろにあり、また私たちの前にあるが、今このときには存在しない。

  時間というものは存在しない。あるのはただ限りなく小さな現在だけで、私たちの生活はこの現在にしか存在しないのだ。

  だから、私たちは現在にのみ精神力のすべてを集中しなければならない。

——智恵の暦

 

宮原育子 訳