本を掘る

これまで読んだ本から一節を採掘していきます。化石を掘り出すみたいに。

トルストイ「生きる武器を持て」

不当な評価を受けたら、必死にあらがうのではなく、小さなユーモアで笑い飛ばす。

 

  ある賢い人間が、あなたは悪い人だと思われていますよ、と告げられた。

  その人はこう答えたという。

「それはよかった。みなさん私のことを何もかも知っているわけじゃないんですね。知っていたらもっとひどいことを言われたでしょうから」

 

宮原育子 訳   

トルストイ「生きる武器を持て」

  自分を強く印象づけるには、自慢話をするか、自分を卑下してみせるかのどちらかだ。

  自慢をしても、相手は信用しないだろう。卑下したなら、こちらが意図した以上に低く見られる。だから一番いいのは、自分のことは何も言わないことだ。そして他人がどう思うかよりも、自分自身の良心の意見を大切にすることだ。  ——人生の道

 

宮原育子 訳  

トルストイ「生きる武器を持て」

  時は私たちの後ろにあり、また私たちの前にあるが、今このときには存在しない。

  時間というものは存在しない。あるのはただ限りなく小さな現在だけで、私たちの生活はこの現在にしか存在しないのだ。

  だから、私たちは現在にのみ精神力のすべてを集中しなければならない。

——智恵の暦

 

宮原育子 訳  

トルストイ「生きる武器を持て」

「富に対する欲望は決して満たされることがない。富を得れば、さらに多くの富が欲しくなるだけだ」とは、古代ローマの賢人キケロの言葉である。

  貧乏を恐れるのではなく、富裕を恐れることだ。  ——智恵の暦

 

宮原育子 訳  

トルストイトルストイ「生きる武器を持て」

  喜びをもって生きるための最良の方法は、人生は喜びのために与えられたのだと信じることだ。

  もし喜びが消えてしまったなら、自分がどんな間違いをしたのか、考えなくてはならない。       ——智恵の暦

 

宮原育子 訳  

トルストイ「トルストイの言葉」

  ふくろうは闇の中では目が見えるが、太陽の光のみなぎっている場所では盲目にひとしい。学者にもこれと同じような現象が見られる。彼らは不必要な学術上の些事なら知っているが、人生にとって最も必要なこと——つまり、われわれはこの世をいかに生きなければならないかという問題——についてはなにも知らないし、また知ることはできないのである。

 

  多くの本を読み、そこに書いてあることをことごとく信じるよりは、むしろ一冊の本も読まないほうがいい。本を一冊も読まなくても、人間は賢くなれる。本に書いてあることを、そのまま頭から信じるならば、人間は馬鹿になるよりほかはない。

                                                                               (人生の道)

小沼文彦 訳編  

トルストイ「トルストイの言葉」

  科学者と芸術家は、民衆に奉仕することを自分の目的としたときにはじめて、自分の活動は民衆にとって有益だ、と言いきることができる。しかし彼らはいま、ひたすら政府と資本家に奉仕することを自分の目的としている。

          (われらはなにをすべきか)

小沼文彦 訳編  

トルストイ「トルストイの言葉」

  芸術は快楽でもなければ慰みごとでもなく、また遊びごとでもない。芸術は偉大な事業である。芸術は、人間の理性的意識を感情へ移す働きをする、人類の生活の機関なのだ。                                                  (芸術とはなにか)

 

小沼文彦 訳編  

トルストイ「トルストイの言葉」

  最悪の泥棒は、自分にとって必要な金品を盗む者ではなく、自分にはそれほど必要でないが、他人にはなくてかなわぬ品物を、他人に与えず握ってはなさない男である。                      (人生の道)

 

小沼文彦 訳編